こんにちは。森です。
みなさんおはようございます。今日はstand.fmにていただいたレターに答えていきたいと思います。
“もし御社が今創業フェーズだったら、この市況の中でどんな資本政策を描きますか。”
という質問を頂いています。ありがとうございます。
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まさに今週、緊急事態宣言が発令されて、本格的に外出規制が敷かれている状況なのですが、各社がビジネスを止めざるを得ない、もしくは弱めざるを得ないような状況ですよね。
ユニクロの柳井さんなんか、戦後最大の危機と表現するなど、ただならぬ状況になってきているわけです。そして、スタートアップへの投資などもご多分に漏れず少し緊縮モード、控えるようなモードになっているんじゃないかなという認識でぼくはおります。
そんな中、資金調達をどういう風にしていくかっていうと、今創業フェーズだったら僕はあんまりエクイティファイナンスをメインでやらないと思います。株での資金調達を出来るだけ最小限に抑えるっていう感じですかね。
じゃあどうするかっていうと、デットファイナンスですね。デットファイナンスというのは融資を受けるって事ですね。スタートアップの資金調達の手段としては大きく2つあって、株を使ったエクイティ・ファイナンス(増資)とデット・ファイナンスですね。
デットファイナンスは、銀行や日本政策金融公庫、あとは信用金庫系(スタートアップの創業融資で有名なところだと西武信金等)あたりはスタートアップの創業期に融資を積極的にやっています。まだ事業を立ち上げる前でも、事業計画によっては1,000万円〜3,000万円借りることも可能です。(この場合、創業資本金は頑張って300〜500万円は用意すると金融機関の印象が良いという噂があります。)
まずはデットファイナンスを積極的にやると良いという話でした。
なぜか?理由を説明しますと、こういった不況の環境下では、自分たちの会社の株価(に伴う時価総額)がどうしても上がらなくなるため、エクイティ・ファイナンスが不利になるからです。
上場企業の時価総額というのは一定のロジックはあります。PERとかPSRとかそういった指標ですね。売り上げの何倍、利益の何倍とかの指標ですね。そういった指標で、ある程度時価総額の目線・コンセンサスはあるんですけれども。未上場のスタートアップにとって時価総額って何で決まるかというと、実はほとんどロジックがありません。
では、どうやって決まるかというと未上場スタートアップの株価は「需給のバランス」で決まるんですよね。
僕がエクイティで資金調達を初めて知ったのが2013年でした。その頃というのは、まだまだスタートアップの投資ムーブメント盛り上がりがですね、少しずつ上がってきた、そういったタイミングだったんですけれども。そのあとどうなったかっていうと、スタートアップの投資がすごく社会の潮流になりまして投資家がどんどん増えていったし、その投資家たちが集めるお金も増えていった。そして、出し手が増えるんで基本的には売り手市場になったわけです。
スタートアップの数がそこまで大きく増えない中で、投資家の数と投資家が持つお金の量ってのが増えた時代がやってきた。つまりお金の量に対して起業家・スタートアップの数が足りない時代に突入し、当然、起業家側の交渉力が強いという時代がやってきたわけですね。
特にシード・アーリーラウンド(創業期)で、お金の出し手が増えたんで起業家が非常に交渉しやすくなって、シードとアーリーの時価総額がどんどんどんどん膨らんでいきました。2013年前後なんかは、最初会社を創業してプロダクトを出す前の時価総額なんか3000〜5000万円とかで株を10〜15%放出して、数百万円とかを資金調達するみたいなのが割と一般的だったんですが、今なんかは時価総額が1億円、高いところなんかはシードで3億とか5億とかの時価総額をつけて、1億円とか調達するみたいな会社も結構普通に多いんですね。この5-6年ほどで随分景色が変わったものです。
当然、時価総額が高いと調達金額も大きくできるので起業家にとっては本当に良い時代でした。
じゃあ今、COVID-19の影響下で不況になっていく時代でどうなるかというと、基本的にベンチャーキャピタルの投資の判断は以前に比べるとすごくやっぱり厳しくみている状況だと思います。
投資家の仕事というのは「安く買って高く売る」が基本的な彼らの仕事の責務なんですよね。当然投資家も資金の出し手(ファンドのLPなど)なので、いくら投資家が「こんな不況下でもスタートアップを支援するぞ!」とか「支えるぞ!」とか言っていたとしても、彼らも投資のプロ、仕事人ですから、(投資は緩めないにしても)時価総額の目線や条件(株式の調達において時価総額以外にも、色々な条件の優先株の条件とかですね色々なオプションが付いてくる)はかなり厳しく見てくるフェーズになっていくでしょう。
投資家の本音はこうでしょう。「絶好の投資タイミングが来た。」と。当然投資家だったら、当然当たり前のことなんですね。それが彼らの仕事ですから、スタートアップ起業家の我々もそこをしっかり理解してあげないといけない。
自分が納得する条件がしっかり勝ち取れれば良いのですが、やはり起業家よりもこれからしばらくは投資側が有利な時代。そのため、今はまずはエクイティ調達の良いタイミングではないと言えるわけです。どうしてもしなくてはいけない場合でも、資金調達の規模を小さくするなど、そういった柔軟性も求められます。(逆に勝負のしどきな場合、条件が悪くても大きめに調達して他社に先行して先行者利益を取る、という経営判断ももちろんあり。ただ、今回は資本政策の話なので戦略の話は置いておきます。)
PMF(プロダクトマーケットフィット)の話も別の記事でしていますが、やはり創業期の起業家の仕事というのは、資金調達を大型でするというよりも、まずは最小限のプロダクトをリリースして、しっかりPMFまで持っていくフェーズだと思います。
資金調達のニュースなどは華やかだし、お金が増えると出来ることも増えるので憧れるのはわかります。自分も昔はそう思っていました。
しかし、まずは大きく調達するっていうよりもしっかりデットを活用し、バーンレート(月の出ていくお金)を最小限にしつつ、本質的で人々に熱狂的に使われるプロダクトを作っていくチャンスです。今仮に創業フェーズだったら、そのように経営を行っていくでしょう。
創業時、資本政策はそういう風に、まずはエクイティじゃなくて融資で繋いで、そして然るべき時にしっかり時価総額を評価してもらえるような投資家(VC、事業会社)を見つけて、そこでエクイティファイナンスをするみたいな感じにしたほうがいいかなと個人的には思っています。
参考になれば幸いです!