「カスタマイズ」が21世紀のものづくり革命である、という本が出版されました。

仕事の中で感じたこと

カスタマイズ 【特注】をビジネスにする戦略という書籍がAmazonの「商品開発」カテゴリーで1位となりベストセラーになっているようですね。

以前、大量生産時代の限界に関する投稿をポストしたのですが、(ポスト大量生産時代の「リーン生産革命」 | MORILOG)やはり傾向は顕著であり時代の変革を感じています。
今週購入して、さっそく読み進めているのですが、今回は書籍内にあった、アメリカで株式上場済みのカフェプレスのCEOであるボブ・マリノの言葉が印象的だったので引用しておきます。

産業革命により、皆が工場で量産された同じものを買うようになって、消費者行動は一変しました。消費者一人ひとりのオリジナリティーがずいぶんと失われた代わりに、以前よりはるかに多くのものが手に入るようになり、人びとは満足したのです。それが20世紀のアメリカの消費実態です。しかし21世紀になって、私たちは新しい局面に到達しています。今はものを持っているだけでは当たり前すぎる時代となりました。これからは、どうやって「当たり前でないものを作るか」、ということが課題となります。その答えがカスタマイゼーションなのです。これは現代において、顧客を満足させるための最も協力な推進力です。カスタマイゼーションは新たな産業革命なのです。

文中では、ファッション、加工食品、自動車など、今後あらゆるものがカスタム革命(カスタマイゼーション革命)によってパーソナル化していくことが予想される、と述べられていますが、これらの業種では過去数十年カスタマイゼーションが普及することはありませんでした。上記のボブ・マリノが述べている消費行動の変化というマイクロトレンドの視点も大切ですが、個人的にはもっと細かい変革まで追っていくことが重要かなと思っています。挙げられる理由としては下記などでしょうか。

(1)流通システムにおける中間業者の存在
20世紀の流通システムは縦割りで、店舗、卸業者、メーカー、製造工場が分かれていたため、消費者と工場は接点を持つ機会がなかったため細かいカスタマイズに対応できず、またニーズの汲み取りもできなかった。
⇒今世紀に入って更に多様化する顧客のニーズを汲み取るには顧客と制作現場が直結したものづくりが必要。職人気質の日本ではこの取り組みが遅れている。

(2)情報・データ移動コストの存在
「情報のデジタル化」以前は、カスタマイズは言うならば「特注」なため、情報・データの移動コストが圧倒的に高かった。顧客の要望に対し多くのプロセスと人が介在した。そのため製品の売り値も高くなってしまったので、マスカスタマイゼーションは不可能だった。
⇒現在は生活のあらゆるものがデジタル化し、はるかに安いコストでデータのやりとりが可能になった。

(1)に関してはWEBサービスやアプリの開発も同じで、多様化するニーズを汲み取るために会社役員やプロデューサーが直接顧客に話しかけユーザビリティをテストするのが当たり前になってきています。
(2)の例を出すと、日本ではラクスルというネット印刷の会社が業績を伸ばしていますね。アメリカだとビスタプリントが存在しています。流通を効率化し、情報・データの移動コストを極力ゼロに近づけることで、低価格で印刷のオーダーメイドサービスを展開しています。

考えてみれば僕たちにとっての最も身近な情報源であるFacebookやTwitter、ニュースアプリは個人個人にパーソナライズされたオーダーメイド製品ですね。以前は情報源といえば、大衆向けにつくられたテレビ番組であったり新聞だったわけですが、今では個人にカスタマイズされているのが当たり前の世の中。誰かが「デジタルで起こった潮流は、アナログの世界でも必ず起こる」と言っていましたがこれは本当にそうで、2010年代はIoTの時代なんて言われたりもしていますが、ものづくりなどフィジカルな事柄にいよいよデジタル化が入ってくる時代。まだまだあらゆるところにクリエイターにとってのチャンスがありそうですね。