「なぜ今D2Cが流行ってるの?」日本で話題になっている3つの理由

D2C(Direct-to-Consumer) マジメな話
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みなさん、こんにちは。
2020年週1でブログ更新を目標にしている森です。一生懸命ブログのネタを探しながら、毎日生き伸びています。

さて、ぼくはFABRIC TOKYOという、いわゆるD2Cスタートアップを経営しています。
いわゆる経営者ですが、D2Cスタートアップを経営する一方で、一人のD2C研究家というかD2Cファンでもあり、自分で調査したり考察した内容を資料にまとめ、インターネット上に無料公開していたりします。

参考:D2C事業に関する関係者向け資料「進撃のD2Cスタートアップ(2019年版)」を一般公開しました | MORILOG

そんなぼくなので、よく「D2Cってなんで今流行っているの?」と聞かれたりします。物をつくるメーカーやネット通販(EC)なんて当たり前なのに、なんで今そんなに騒がれているの?といった具合にです。
これには明確な答えがあるので、今回はその疑問に答えてみたいと思います。

現在日本でD2Cが話題な理由3つ

結論から言うと現在日本でD2Cが盛り上がってきている理由は、「スマホシフト」「人材」そして「認知」です。

1つめに「モバイルシフト」です。
下記の図は、総務省が調査した日本国内におけるスマートフォン個人保有率の推移です。

総務省|平成29年版 情報通信白書 スマートフォン個人保有率の推移

2014年の時点で、既に20代と30代のスマホ所有率が80%を超えてきています。この頃からいわゆるキュレーションメディアが隆盛し、インターネット上にあらゆる分野の情報が溢れかえり、人々も情報収集の方法を従来のメディアからインターネットメディアに切り替えていきました。

そしてこれ。

2019年11月更新!最新Instagramユーザー数は日本で3,300万人!利用者増が続く理由は?ユーザー層・利用シーン・企業の活用事例も紹介 https://www.digi69.com/sns/20190328

InstagramなどのSNSの急激なユーザー増加です。2014年から2016年でユーザー数が国内では4倍になっています。
この時期に多くのインフルエンサーが誕生し、そして多くの企業公式アカウントなどもスタートしました。

PCでインターネットに触れていた時代が終わり、スマートフォンを常に持ち歩き24時間365日インターネットに接続されている時代へと突入したんです。

こういった背景から、2014年前後で、「スマホシフト」により「情報の接点がインターネットメディアやSNSに変わった」という変化が大きく起こりました。
デジタルを主軸に展開するD2Cブランドを、消費者たちは見つけやすくなったのです。Instagramをハック(うまく活用)したブランド運営者が大きく業績を伸ばしていきました。

2つめに「人材」です。
1999-2000年に起こったドットコムバブルから20年。日本において、インターネット利用人口1,500万人、利用率13%だった1999年から20年経ち、2019年現時点では利用人口1億人超、利用率も80%を上回るまで普及しました。20年前に10歳だった人も今は30歳になり、いわゆるデジタルネイティブ世代・ミレニアル世代が社会の労働と消費の中心の世代となってきたのが実はまだこの5年程になります。そんなデジタルネイティブ世代たちが、既存産業の企業に就職し、デジタル目線で既存産業の課題を知ることになります。それまでインターネットが好きな人間はIT業界という選択肢しか無かったのに、あらゆる産業にインターネットが溶け込み、デジタルネイティブ世代にとっての選択肢が劇的に増えたのが今です。

そして世界中で巻き起こるアントレプレナーシップの隆盛の背景があります。
元々スタートアップはシリコンバレーを中心としたIT業界を中心に勃発したムーブメントでした。パロアルトにあるスタンフォード大学に在学していたプログラマたちが起業し、世界中に使われるインターネットサービスを創り上げてきました。
そんなインターネットサービスムーブメントが1周も2周もしてくると、前述したのと同じく、あらゆる産業が起業家たちの対象になってきたのです。フィンテック、B2B SaaS、シェアリングエコノミービジネスなども同じ潮流の中で出来てきた事業でしょう。

テクノロジーはコンピュータ・サイエンスなど理系出身のエンジニア起業家たちが立ち上げて行くのが一般的でしたが、小売・ブランドビジネス領域は意外とエンジニア達がわからない領域として進化が遅れていました。そこに可能性を見出したデジタルネイティブ世代の起業家たちが世界中で同時多発的に創り上げてきたのがD2Cスタートアップ群です。AWSやShopifyなどのクラウドツールでブランドを安く早く立ち上げやすくなった背景もあり、数多くのD2C起業家たちが新しいブランドを世の中に生み出しました。

日本でも、大きく業績を伸ばしているD2Cスタートアップの起業家は元々メーカー出身だったり、広告代理店出身者だったりします。決してテック系出身者ばかりではなかったりするわけです。彼らはエンジニア起業家が苦手なブランド・リテールという領域に、テック要素を帯びたリテールブランドモデルを持ち込むことで、小売業界の革命児となっています。

最後に「認知」です。
以下の画像をご覧ください。

DTCブランド(DNVB、DTC、D2C)でユニコーン&M&Aされたリスト – ぺーたろー/Jumpei Notomi – Medium

上記のように、D2Cスタートアップからは多くのユニコーン企業(未上場で時価総額$1Bを超える企業の呼称)が創出されています。
特に、2019年に顕著で、Warby Parker以外のユニコーン企業は2019年初頭に生まれました。

日本では、2018年6月4日に日本政府が2023年までにユニコーンを20社創出する閣議決定がされるなど、何かとユニコーン企業が話題です。ぼく自身も起業家をやっているため、経営者の会合などに行くと日々ユニコーンという言葉を耳にするのです。

そんな状況の中、アメリカではD2Cスタートアップからユニコーンがいきなり複数社生まれることになった。IT系メディアやアーリーアダプターは見逃さず、多くの紹介記事が生まれ、SNSでシェアされてきました。(FABRIC TOKYO社もたくさん取材を受けました。ユニコーンじゃないのに。笑 アリガタヤ。)
その結果、「人材」の部分でお話したように、ピュアなテック企業だけではなく、ものづくりやサプライチェーンといった既存産業の要素を多分に含むD2Cという領域でもユニコーンを創出する可能性があるのだと、国内でも認知され、一気にスタートアップのビジネスアイデアとして有効として取り扱われ始めたのが昨年だと思っています。

さて、ではなぜD2C領域ではユニコーンを創出することができたのでしょうか?
理由は様々ですが、D2Cに限らずユニコーンとなっているスタートアップの唯一と言って良い共通点があります。それは「TAM」です。

TAM = Total Addressable Market(到達可能な最大の市場規模)です。
過去20年、インターネットサービス事業者の主戦場といえば「メディア」「広告」「EC」「SNS」でした。この中でもD2Cを連想しやすいのはECですが、これまでのECといえば、モールが中心で基本的にはどこかのメーカーの物を仕入れて掲載する仕入れ型or出店型で販売手数料(= Take Rate)を得るサヤ取りビジネスでした。つまりECビジネスの実際の市場規模は対象商品の市場規模ではなく、そのうちの一部の販売手数料の総額が市場規模でした。

一方でD2Cは、自らがメーカーであり自らコンシューマー向けに販売することが基本的な概念なため、扱う商材の市場自体がそのまま市場規模になります。例えばとある商材の市場規模が1兆円で上記のTake Rateが仮に20%だった場合、旧来の販売手数料型のECの場合市場規模は2,000億円、しかしD2Cの場合は市場規模を1兆円とみなすことができ、より大きな売上及び利益を大きくしやすいということになります。
これは思ったよりもスタートアップにとって影響が大きくて、たとえば上場後の株価は今後の売上成長率や将来キャッシュフローによって大きく評価額が変わるので、「まだまだ伸びていける市場規模であるか?」という視点は非常に重要なわけです。上場後の投資家の目線からも、TAMというのはとても重要な要素です。

なお、蛇足ですが、個人的に感じていることは、D2Cスタートアップの今後のトレンドは、実はアメリカからヨーロッパへ移行するのではないかと思っています。D2Cはテック要素を帯びたブランドビジネスであると言えます。ヨーロッパ人の美意識の高さ、文化の深み、そしてデジタルネイティブ世代の台頭。間違いなく何か起こると予想しています。

はい、というわけで本日のまとめですが、現在日本においてD2Cが話題になっている背景をご説明してみました。他にももちろん理由はあるのですが、大枠なところで3つ挙げるなら今回ご紹介した「スマホシフト」「人材」そして「認知」だと思います。
ぜひぜひいろいろな意見をTwitterなどでいただけたらと思っています。

D2Cに関してもっと詳しく知りたいという方は、年明け早々Takramのビジネスデザイナーである佐々木康裕さんが以下の素晴らしい書籍を出版されたので、ぜひ読んでみてください。


なお、FABRIC TOKYOは年間倍以上のペースで事業成長中です。事業拡大・新規取り組みなど話題が盛り沢山なため、ほぼ全職種で募集しています。D2C/DNVBやデジタル小売・ニューリテールに興味がある人は、ぜひ気軽にご連絡ください!

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■「D2C」とは?
D2Cとは、Direct to Consumerの略。オンラインを駆使してブランドを立ち上げる手法の総称で、DTCやDtoCとも書きます。最近ではDNVB(Digitally Native Vertical Brands)と言われたりもします。